これは私の大切な友人のお話しです。

彼女は、看護師になりご老人向けの医療センターで勤務していました。

その日は、夜勤でした。とある男性のご老人からナースコールが鳴り、部屋に向かったのです。

誰にでも感じの良い彼女は、その部屋のおじいちゃんのお気に入りでもあり、よく会話をしていました。

部屋でおじいちゃんは、こんなことを言ったそうです。

「〇〇ちゃん(彼女の名前)、自分もうどこも悪くないのに、病院から退院できないのはなぜなんだろう・・・。〇〇ちゃんから先生に聞いてもらえない?」と。

ちょうど担当医が宿直していたことから、彼女は、ドクターに理由を確認しました。

するとドクターはこう言った。

「〇〇さん(おじいちゃんの名前)は、ご家族が退院を渋っていて可能な限り病院にいさせて欲しいと言ってきてるんだよ・・・・」

そういえば、ご家族がお見舞いにくるのもほとんど目にしたことがなかったそうです。

今の時代は、病院では入院できる期間が決まっていて、ご家族の要望で、際限なく入院できるということはないと思います。

彼女は、おじいちゃんに頼まれた手前、回答しなくてはなりません。

彼女は意を決めておじいちゃんにこう話しました。

「だいぶ回復していて退院しても大丈夫そうに感じるかもだけど、今退院するとまた再発してしまう可能性があるんですって。
だから、もう少し、一緒に頑張ろう(笑)」と。

おじいちゃんは、「〇〇ちゃん、確認してくれてありがとう!気持ちがすっきりした。〇〇ちゃん、もう少し面倒みてね!(笑)」

その夜中、おじいちゃんは、病院の3階から飛び降り自ら命を絶ってしまったのです。

病室には彼女宛ての手紙が残されていました。

「〇〇ちゃん、本当にいろいろありがとうね。最後に〇〇ちゃんの優しさに触れることができて幸せだった。感謝してます。」と。

おじいちゃんは、家族の事情も実はみんな分かっていたのです。最後に、彼女の優しさに触れたかったのでしょう。

彼女は、呆然自失。家に帰り泣き叫ぶしかなかったそうです。

自分の非力さをせめて。

泣きながら、何度も「おじいちゃん、ごめんね」と繰り返しました。

彼女は、決めたのです。

「在宅看護ができる保健師になる!」と。

そんな矢先に、交際中の彼からプロポーズを受けました。

彼女は、彼に保健師になると宣言し「結婚は、保健師になるまで待って欲しい」と伝えました。

彼は言います。「君が保健師になる夢を一緒に実現しよう。全面的に協力するから結婚して欲しい」と。

彼女は、その言葉を信じて結婚しました。

ある時から、ご主人の両親と同居することになり、家事、日勤・夜勤、そして、彼女からすれば納得できないことも多くご主人に想いを伝えました。(彼女の性格からしても相当な思いがあったのだと)

「保健師になるの一緒に協力してくれると言っていたよね?」

ご主人の口から出た言葉に彼女は唖然としてしまったのです。

「保健師?え?あれ本気にしていたの?結婚してそんなの無理に決まってるでしょ。それよりも早く子づくりして、子供つくろうよ。保健師になるなんて夢みたいなこと言ってないで現実見ないとね」

彼女は即離婚を決めました。

ひとりぼっちになった彼女を誠実に支え、勉強を必死に教えてくれる男性も現れました。

人は会うべき人には、人生の節目で会うようになっているのかもしれません。

そして、彼女は無事に保健師となり、今は、在宅看護のネットワークを構成する組織を立ち上げ頑張っています。

私に彼女はよく言っていました。

「おじいちゃんのような人は、もう絶対に出さない。おじいちゃんもその家族も守れる人になりたい」と。

苦しい時代に勉強を教えてくれ、励ましてくれた男性とは、結婚には至りませんでしたが、その後、彼女は人生のパートナーとめぐり合い、今は、幸せな家庭を築きお子様にも恵まれました。

人生は「点」で見てはいけない、「点」で判断してはいけないのです。

今まで彼女に起こった試練や諸々の出来事は、彼女自身を大きく成長させ、人の心の痛みに寄り添える人にしたのだと思います。

そして、今まで彼女に起こった出来事は、今の彼女になるためのプロセスだったのではないでしょうか。

彼女を支え保健師になるまで見届けてくれた男性との出会い、そして、今のご主人との出会い。

彼女が苦しくやけになりそうな時、色々な男性から誘惑があったようです。

でも、彼女は、人生の中で会うことになっていた人に支えられ、自分の人生を立て直しました。

今でも可愛く魅力的な彼女の笑顔を見ると同性の私でも抱きしめたくなります。

私の大好きで大切な友人です。

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